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【感想】『Re:ステージ!ドリームデイズ♪』が素晴らしいアニメだった理由【考察】

こんにちは。くろーぷです。

 

 

ついに2019年9月29日をもってRe:ステージ!ドリームデイズ♪の放送が終わってしまいましたね…。

個人的には追いかけて4年目になるコンテンツだったので、最終回を迎えた時は本当に感慨深かったですね。一時期は本当にこの先があるのか…と思うようなこともたくさんあって…と、本題はそちらではなかったですね。

 

 

今回は「なぜ『Re:ステージ!ドリームデイズ♪』(以下リステDD)があそこまで素晴らしい作品になりえたのか?」という問いをストーリーの構成という側面から考えてみます。本当に感動的で最高のクオリティだったのですが、僕は序盤から11話まである違和感を覚えていました。そしてそれが12話で解消されました。その鮮やかさ、清々しさには鳥肌が立ったほどでした。

 

 

ではその違和感とは何だったのか。結論から書くと「ファンが12話を除き描かれなかったこと」です。これだけだと意味が分からないと思うので、以下で詳しく書いていきます。

 

 

 

 

1.アイドルとはファンがいて初めて「アイドル」になる

 

 

アイドルをアイドルたらしめるものは何か。歌うこと、踊ること…様々あると思いますが、僕は「ファンが存在していること」だと思います。人数は関係ありません。1人でも1万人でも、ファンがいれば等しく「アイドル」であると考えます。

 

アイドルがなぜ歌うのか、踊るのか、笑うのか、泣くのか。それはすべてファンが存在するからです。ファンが存在しなければあくまでアイドル的なもの。ファンがパフォーマンスを受け取ってくれるからアイドルでいられるのです。

 

 

これは現実のアイドルにだけ当てはまるものではありません。アイドルアニメもその御多分に漏れず必ずと言っていいほどファンが描かれています。以前のエントリー(Re:ステージ!ドリームデイズ♪は王道部活ものアニメで行くべきだなぁと思う理由:くろーぷの不定期ブログ)の中で「アイドルアニメはプロを扱う作品とアマ(部活)を扱う作品がある」と書きましたが、そのプロ・アマ問わず必ずファンは描かれてきました。

 

THE IDOLM@STER』シリーズ、『Wake Up, Girls!』『AKB0048』『ゾンビランドサガ』『普通の女子校生が【ろこどる】やってみた。』など、登場の仕方に差はあれど、そのグループを愛するファンが描かれます。このような「プロ」の作品であってもファンは不可欠ですが、「アマ」の作品であってもファン必ず登場してくるのです。代表例が『ラブライブ!』シリーズです。廃校から母校を救うため、人気というファンでしか測れない物差しを登場させています。どんなアイドルアニメであっても、ファンという存在はアイドル達と不可分なものとして現れるのです。

 

 

アイドルアニメにファンは現実のファンとはまた違った役割を持っていると僕は考えています。それはアニメの中という非現実なアイドルに没入するためのペルソナとして視聴者とアイドルをつなぐ存在だからです。もし現実にアニメの中のアイドルがいたらファンはどんな反応をするのか、どう作品の中でアイドル達は認められているのか、それを提示する役割を果たしていると考えます。

 

つまり、アイドルアニメのファンとは「疑似的に描かれた視聴者」であり、「作品に主体性を持って参加するための装置」だと言えるでしょう。ともすれば寒いアイドルという存在に血を通わせ、熱を持たせるのがファンなのです。描かなければただの痛い女の子たちになりかねません。ファンの描写はアイドルアニメの絶対外せないファクターだと考えます。

 

 

しかし、リステDDにはそのファンがほぼ描かれませんでした。プリズムステージの地方予選ではKiRaReを目的に来た観客は先生を除きほぼ登場しませんし、9話・11話の校内ライブでも見に来ているのはサバゲ部や生徒会という以前から香澄や実と交流があった面々がほとんど。KiRaReというグループのパフォーマンスで獲得したファンとはまた違っています。

 

 

リステDDはアイドルアニメをアイドルアニメたらしめるファンというファクターを描かないという極めて珍しい、というよりはあり得ない構成をしていました。ただそれでも最高の「アイドルアニメ」になったのです

 

 

それはテーマの徹底した追及があったから、僕はそう考えています。

 

 

 

 

2.ファンを描かなかったリステDDの「部活アニメ」という戦略

 

 

話はいったんRe:ステージ!プロジェクトそのものまで遡ります。

Re:ステージ!プロジェクトは2015年にスタートした「アイドルという一度諦めた夢をもう一度目指す少女たちの物語」です。このテーマは4年前から一貫して変わることなく続いています。僕はこの「一度諦めた」「アイドルをという」「夢を目指す」ことが他のアイドル作品と大きく違っていると考えています。

 

 

KiRaReはこのテーマに即して考えるとアイドルではありません。あくまで「アイドルを目指す少女たち」でしかないのです。ほかのアイドルアニメは紆余曲折ありつつも早い段階でファンを獲得し「アイドルになって」話が展開してくことがほとんどです。しかし、リステDDはその意味で「アイドル」になれていません。あくまでアイドルを目指して部活をしている少女たちでしかないのです。つまりリステDDは「アイドルを目指す少女たちの部活アニメ」の体裁をとっていました。あくまで自分たちの目標を目指す。友情・努力・勝利のアニメです。甲子園を目指す、スポーツで全国制覇を目指す…最終目標をそこに変えても通じるものであったとさえ思います。しかしこの体裁をとることでリステDDでしかなしえなかったものがありました。

 

 

それが「テーマの徹底」であり「個を掘り下げ、内輪を理解させること」でした。

 

 

 

 

3.テーマの徹底によって生まれた誰しもに当てはまる普遍性

 

 

リステDDは徹底して「一度諦めた夢をもう一度追いかけること」を描き続けていました。それはなぜ少女たちが夢を諦めたのか、そしてもう一度目指そうと思ったのか、その掘り下げが非常に重要だったからです。その点で視聴者に共感してもうことが生命線だったのです。そしてこの掘り下げが完璧でした。個々のストーリーに他のメンバーの思いが乗り、複雑で美しい、そして共感できるバックボーンが生まれました。この共感こそがリステDDの強みであると僕は考えています。

 

 

先にも述べましたがリステDDはファンが描かれません。つまり視聴者はファンという媒介なしにKiRaReと直接向き合うことになります。この仕組みが彼女たちを輝かせました。ひたむきに夢を目指して走り続け、悔しさも挫折も幸福も、何もかもを味わったKiRaReという少女たち。その感情をダイレクトに視聴者は味わうことができました。

 

「一度諦めた夢をもう一度追いかける」少女たちは懸命に今を生きる存在でありつづける。彼女たちは自らと対話し、そして立ち向かう。そんな姿は僕たちにこう語りかけているかのようでした。

 

 

「あなたはどう?夢を追いかけてる?諦めてない?」

 

 

夢を諦めず走り続ける、この普遍的な姿勢を描き切ることで僕たち視聴者を巻き込み、考えさせ、物語に参加させました。この泥臭いまでの必死さ。それが視聴者の人生に問いかけているかのようでした。

 

このファンが介在しないことによるリアル感、息遣いが伝わってくるかのような距離感がリステDDの最大の強みなのです。

 

 

そうして迎えた12話で、KiRaReのいままでのすべてが報われることになります。

 

 

 

 

4.KiRaReが「アイドルになった」最終話

 

 

11話までの内容で視聴者はKiRaReを応援するファンとなり、フィナーレの12話を迎えます。決勝の舞台で帰っていく観客に憤りを覚え、そして心から「KiRaRe頑張れ!」と願ったのは僕だけではなかったと思います。

 

 

そして迎えたライブシーン。今までのすべてを出し切りKiRaReは観客を虜にします。

観客、ライバル問わず見たすべての人がKiRaReを応援し始める。

 

 

この瞬間、KiRaReにファンが生まれ「アイドルになった」のです。

 

 

ライブの最後、舞菜は言います。「これが私たちの夢の始まり」であると。まさしく「アイドルという一度諦めた夢をもう一度目指す少女たち」の「夢がかなった」瞬間です。

 

これは少女たちにファンが生まれアイドルになった、夢がかなった瞬間に立ち会った人として僕たち視聴者が存在した瞬間でもありました。

 

 

「アイドルは物語である」。アイドルとは何かという問いの一つの答えです。この物語には一言「成長物語」であると僕は付け加えたいと思います。成長とは成功だけではありません。挫折も失敗も成長につながる大切な宝ものです。この「成長物語」をリステDDは美しく描き切りました。それも夢を追いかけるという誰もが目指し、そして多くの人があきらめてきたテーマに沿って。

 

 

この純粋すぎるくらい真っ直ぐな思いが、僕たちの心を打ち、感動させました。

これが『Re:ステージ!ドリームデイズ♪』が素晴らしいアニメになった最大の要因であると僕は考えています。誰もがあきらめてきたことを臆せず突き進む。その姿が僕たちに勇気を与えたのだと思います。

 

 

『Re:ステージ!ドリームデイズ♪』はただのアイドルアニメではありませんでした。誰もに愛され、誰もに勇気を与えるアニメなのです。このもらった勇気を僕たち一人一人が心に持ち、そして生きていくこと。挫折のたびに立ち上がること…。

 

 

『Re:ステージ!ドリームデイズ♪』は一つの区切りを迎えました。しかしRe:ステージ!は終わりません。Re:ステージ!にもらった感動を一人一人が持ち続け、その人生が続く限り続いていくのです。

 

 

「失敗したってそう終わりじゃないよ 未来のピースを手に入れたんだよ1つ」

 

「今ここが キミとあの日夢見たStart Line

 

これからもKiRaReの夢は続きます。その姿をまた見れる日まで、これからは僕たちリメンバーズが夢を追いかける番です。KiRaReのくれた勇気を胸に秘めて。

 

 

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